Windows のいろいろなバージョンで C / C++ の GUI 開発環境の最もシンプルな設定方法を説明しています。今回は Windows 8.1 です。
バージョンは Windows 8.1 Pro 64bit です。
まずエディタですが、お好きなものを使ってください。Emacs が良ければ最新のバージョン 26.3 が使えます。次のリンクから emacs-26.3-x86_64.zip をダウンロードしてください。
Index of /gnu/emacs/windows/emacs-26
ダウロードした zip ファイルをお好きな場所に展開してください。私は C:\ に展開しました。実際に使うのは、emacs-26\bin\runemacs.exe になります。
今回も Msys2 を介して MinGW をインストールします。
次のリンクから msys2-x86_64-20190524.exe をダウンロードしてください。最新の20200602 では、wxWidgets の make ができません。
インストールする場所はデフォルトの C:\msys64 にします。
インストールすると、Msys2 のコンソールが自動的に開きます。もしコンソールが開いていなかったら、C:\msys64 の中の msys2.exe を開いてください。そしてコンソールに次のようにコマンドして、C / C++ をインストールします。
pacman -S mingw-w64-x86_64-toolchain
pacman は Msys2 のパッケージマネージャです。C と C++ は、C:\msys64\mingw64\bin にインストールされます。インストールが終わりましたらコンソールを閉じてください。
そして今度は、C:\msys64 の中の mingw64.exe を開きます。
// インストールされた C のバージョンを確認します。
$ gcc --version
gcc.exe (Rev2, Built by MSYS2 project) 8.3.0
Copyright (C) 2018 Free Software Foundation, Inc.
This is free software; see the source for copying conditions. There is NO
warranty; not even for MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE.
// インストールされた C++ のバージョンを確認します。
$ g++ --version
g++.exe (Rev2, Built by MSYS2 project) 8.3.0
Copyright (C) 2018 Free Software Foundation, Inc.
This is free software; see the source for copying conditions. There is NO
warranty; not even for MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE.
msys2.exe と mingw64_.exe は役割が違います。
msys2.exe を使うのは、何かのパッケージをインストールする時だけです。
よく使う mingw64.exe の方をスタートメニューに登録するか、タスクバーに登録すると良いでしょう。
新しいバージョンの Msys2 では、すべての作業を msys2.exe で行えるようになっているという話もありますが、一応上記のことを守って作業していきます。
なお、Msys2 の新しいバージョンでは、Msys2 に emacs をインストールすることができます。msys2.exe を開いて次のようにコマンドしてください。
pacman -S emacs
emacs で何かの作業をする場合は、mingw64.exe を開きます。
// バージョン確認
$ emacs --version
GNU Emacs 26.2
Copyright (C) 2019 Free Software Foundation, Inc.
GNU Emacs comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY.
You may redistribute copies of GNU Emacs
under the terms of the GNU General Public License.
For more information about these matters, see the file named COPYING.
// emacs で *~ とか #* というバックアップファイルを作らないようにするには、
// ホームディレクトリに .emacs というファイルを作ります。
// mingw64.exe を開いた場所がホームディレクトリです。
emacs .emacs
// そのファイルに次のように記述します。
(setq make-backup-files nil)
(setq auto-save-default nil)
これで、Windows API プログラミングをする準備が整いました。
次のコードを記述して、C:\msys64\home\ユーザー名 に保存してください。
#include <windows.h>
LRESULT CALLBACK WndProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM);
int WINAPI WinMain(HINSTANCE hInstance,
HINSTANCE hPrevInstance,
LPSTR lpCmdLine,
int nCmdShow)
{
WNDCLASS wc;
HWND hwnd;
MSG msg;
wc.style = CS_HREDRAW | CS_VREDRAW;
wc.lpfnWndProc = WndProc;
wc.cbClsExtra = 0;
wc.cbWndExtra = 0;
wc.hInstance = hInstance;
wc.hIcon = NULL;
wc.hCursor = LoadCursor(NULL, IDC_ARROW);
wc.hbrBackground = (HBRUSH)COLOR_BACKGROUND + 1;
wc.lpszMenuName = NULL;
wc.lpszClassName = TEXT("WINDOW");
RegisterClass(&wc);
hwnd = CreateWindow(TEXT("WINDOW"),
TEXT("Hello Windows API!"),
WS_OVERLAPPEDWINDOW | WS_VISIBLE,
CW_USEDEFAULT, CW_USEDEFAULT, 300, 200,
NULL, NULL, hInstance, NULL);
while (GetMessage(&msg, NULL, 0, 0))
{
DispatchMessage(&msg);
}
return msg.wParam;
}
LRESULT CALLBACK WndProc(HWND hwnd, UINT msg, WPARAM wParam, LPARAM lParam)
{
switch (msg)
{
case WM_DESTROY:
PostQuitMessage(0);
break;
}
return DefWindowProc(hwnd, msg, wParam, lParam);
}
mingw64.exe を開きます。コンソールが開いた場所が C:\msys64\home\ユーザー名 になっています。
// コンパイル
gcc hello.c -o hello -mwindows
// 実行
./hello
C:\msys64\home\ユーザー名 に出来上がった hello.exe をダブルクリックしても実行できます。hello.exe をデスクトップなどに移動してダブルクリックしても実行できます。
次のパスを環境変数に登録すると、コマンドプロンプトでもコンパイルと実行ができるようになります。また、wxWidgetws や GTK で作成した exe ファイルをダブルクリックで実行する場合にも次のパスの登録が必要になりますので、ぜひ登録してください。
C:\msys64\mingw64\bin;
パスの登録が終わりましたら、先ほどの hello.c をお好きな場所に保存してください。そしてコマンドプロントを起動して、hello.c を保存したディレクトリに移動し、次のようにコマンドして、コンパイルと実行をします。
// コンパイル
gcc hello.c -o hello -mwindows
// 実行
hello
出来上がった hello.exe をダブルクリックしても実行できます。hello.exe をデスクトップなどに移動してダブルクリックしても実行できます。
wxWidgets も、Msys2 を使ってインストールします。
まず make というコマンドをインストールしておきます。msys2.exe を開いて、次のようにコマンドしてください。
// インストール
pacman -S make
// バージョン確認
$ make --version
GNU Make 4.2.1
このプログラムは x86_64-pc-msys 用にビルドされました
Copyright (C) 1988-2016 Free Software Foundation, Inc.
ライセンス GPLv3+: GNU GPL バージョン 3 以降 <https://gnu.org/licenses/gpl.html>
これはフリーソフトウェアです: 自由に変更および配布できます.
法律の許す限り、 無保証 です.
インストールが終わりましたらコンソールを閉じてください。
そして、次のリンクから Latest Stable Release: 3.0.5 の Windows Installer をダウンロードします。
ダウンロードされた wxMSW-3.0.5-Setup.exe は、実際にはインストールを行わず、必要なファイルを展開するだけです。デフォルトのまま C:\wxWidgets-3.0.5 に展開します。そして今度は、mingw64.exe を開いて次のようにコマンドします。
// wxWidgets のディレクトリに移動します
cd C:/wxWidgets-3.0.5
// wxWidgets をコンフィギュア(環境設定)します
./configure --disable-shared --enable-unicode
次のように表示されればコンフィギュアは成功です。
Configured wxWidgets 3.0.5 for `x86_64-w64-mingw32´
Which GUI toolkit should wxWidgets use? msw
Should wxWidgets be compiled into single library? no
Should wxWidgets be linked as a shared library? no
Should wxWidgets support Unicode? yes (using wchar_t)
What level of wxWidgets compatibility should be enabled?
wxWidgets 2.6 no
wxWidgets 2.8 yes
Which libraries should wxWidgets use?
STL no
jpeg builtin
png builtin
regex builtin
tiff builtin
zlib sys
expat sys
libmspack no
sdl no
続いて make と make install をします。
// make します。make は時間がかかります。
make
// make[1]: ディレクトリ '/c/wxWidgets-3.0.5/utils/wxrc' から出ます。と表示されれば make は成功しています。続けてインストールします。
make install
// 次のように表示されればインストール成功です
------------------------------------------------------
The installation of wxWidgets is finished. On certain
platforms (e.g. Linux) you'll now have to run ldconfig
if you installed a shared library and also modify the
LD_LIBRARY_PATH (or equivalent) environment variable.
wxWidgets comes with no guarantees and doesn't claim
to be suitable for any purpose.
Read the wxWindows Licence on licencing conditions.
------------------------------------------------------
// ホームディレクトに戻ります。
cd
// バージョンを確認します
wx-config --version
3.0.5
これで、wxWidgets プログラミンができるようになりました。次のコードを記述して、C:\msys64\home\ユーザー名 に保存してください。
#include <wx/wx.h>
class Hello : public wxFrame
{
public:
Hello();
};
class App : public wxApp
{
public:
virtual bool OnInit();
};
Hello::Hello() : wxFrame(NULL, -1, wxT("Hello wxWidgets!"),
wxDefaultPosition, wxSize(300, 200))
{
Center();
}
IMPLEMENT_APP(App)
bool App::OnInit()
{
Hello *hello = new Hello();
hello->Show();
return true;
}
mingw64.exe のコンソールを開いて、次のようにコマンドしてコンパイルします。
// コンパイル
g++ hello.cpp `wx-config --cppflags --libs` -o hello -mwindows
// 実行
./hello
C:\msys64\home\ユーザー名 を開いて hello.exe をダブルクリックして実行することができます。hello.exe をデスクトップなどへ移動してもダブルクリックで実行できます。
インストールした wxWidgets を削除します。
Msys2 でインストールした wxWidgets は Msys2 の中にコピーされています。 C: にインストールした wxWidgets はなくても大丈夫です。というか、今後もし Code Blocks などを使って wxWidgets プログラミングをする場合には、wxWidgets をもう一つインストールし直す必要があります。wxWidges のディレクトリ名を別の名前にしてもう一つインストールすることもできますが、間違えやすいので思い切って削除します。
コントロールパネルを使って wxWidgets-3.0.5 を削除してください。そして、手動でも C:\ のwxWidgets-3.0.5 を削除してください。
hello.exe も削除して、Msys2 で hello.cpp をコンパイルし直してください。正常にコンパイルできることでしょう。
GTK も Msys2 を使ってインストールします。
msys2.exe を起動して、次のようにコマンドして GTK をインストールします。GTK は C:\msys64\mingw64\bin にインストールされます。
// gtk2 のインストール
pacman -S mingw-w64-x86_64-gtk2
// gtk3 のインストール
pacman -S mingw-w64-x86_64-gtk3
これで GTK プログラミンができるようになりました。次のコードを記述して\msys64\home\ユーザー名 に保存してください。
#include <gtk/gtk.h>
int main(int argc, char *argv[])
{
GtkWidget * window;
gtk_init(&argc, &argv);
window = gtk_window_new (GTK_WINDOW_TOPLEVEL);
gtk_window_set_title (GTK_WINDOW(window), "Hello GTK!");
gtk_window_set_default_size(GTK_WINDOW(window), 300, 200);
gtk_window_set_position (GTK_WINDOW(window), GTK_WIN_POS_CENTER);
g_signal_connect(window, "destroy", G_CALLBACK(gtk_main_quit), NULL);
gtk_widget_show(window);
gtk_main();
return 0;
}
mingw64.exe を開いて次のようにコマンドします。
// gtk2 でのコンパイル
gcc hello.c `pkg-config --cflags --libs gtk+-2.0` -o hello -mwindows
// gtk3 でのコンパイル
gcc hello.c `pkg-config --cflags --libs gtk+-3.0` -o hello -mwindows
// 実行
./hello
出来上がった hello.exe をダブルクリックしても実行できます。hello.exe をデスクトップなどに移動してダブルクリックしても実行できます。